自己利用の別荘、かつ利用しない時間は旅館業許可を得た宿泊施設としてゲストを迎え入れることができる、ハウスバード株式会社の“1日から貸せる家”。
家族みんなが心置きなく帰れる場所としてはもちろん、収益資産として育てることも、また決算や相続対策のための事業投資としての側面も持ち合わせるなど、ハイブリッドで新しい住まいのカタチだ。
そして宿泊施設としてのコンバート時にAirbnbを使って集客することで、観光地でなかったとしても、その地に眠る良質なコンテンツやコミュニティを求めてやってくる“暮らすように旅する”人々が地域を訪れ、新たな人流や雇用、収益の創出することができるのと同時に、地域が直面する空き家問題をはじめとした社会課題を解決する一助にもなる。
そんなハウスバードの“1日から貸せる家”を、これからの家族全体のライフスタイル形成に選んだHiromiさんは現在、香川県高松市の東隣、さぬき市小田という閑静な海沿いの一角で、『COQAEL(コカエル)』という名の別荘兼一日一組限定のバケーションレンタルを運営している。COは“一緒に”、QAELは“かえる”。大切な人と共に自然あふれる場所で本来の自分にかえる。利用するみんなが「またここにかえりたい」と思ってもらえるような場所づくりに奮闘する。
「両親は常々、引退したら高松の牟礼の辺りで中古の家でも購入して……なんていうことを口にしていました。ただしバケーションレンタルとしても運営するなら、私が今住んでいる高松から通える距離じゃないといけないなあと。地理的条件を絞って県内の別荘がある地域を見てまわる中で、この場所と出会いました。すごく静かな海水浴場で、手が付けられていないこんな場所がまだあるんだ!と家族みんなで一目惚れした感じです」
禍の折り、何らかの新たなビジネス・チャレンジができないかと模索を続けていたHiromiさん。偶然ウェブサイトでハウスバードの事業を見つけ資料をダウンロードした。もともと旅行関連の職種に就ている実兄の影響もあり、宿泊事業には淡い興味を抱いていた。
「ちょうど近所に一棟貸しの宿がオープンした矢先で、何もない田舎の国道沿いになぜ人が泊まりに来るんだろうと不思議に思っていた頃でした」
面会後、ハウスバードと打ち合わせをする中で事業関連補助金なども上手く活用しながら、二人三脚で計画を進めていった。
ハウスバードの“1日から貸せる家”は、代々受け継がれてきた既存の持ち家はもとより、第二のふるさととして住みたい地域で空き家となっている古民家を購入後リノベーションを施したり、はたまた新築も含めて多様なケースに柔軟に対応する。Hiromiさんの場合、お気に入りの建築家が描いた設計プランのもと、現地の景観に馴染むデザイン性の高い建物を新たに造ったことが、若い世代を中心とした集客につながっていると認識している。
「さぬきの景観を邪魔しない和モダンな建物に仕上げてもらいました。仕様については、設計の段階からハウスバードさんにも入ってもらい、定員15人の利用客が快適に過ごせる空間を探っていきました。大人数でもリビングに一堂に集まれ、かつ就寝時にはプライバシーを保てるよう寝室は多くして。南側には山を望む広い縁側があり、北側の海がいちばんきれいに見える場所にはホールをつくってもらったことで、南北でまったく違った印象の景観を楽しめるような空間になっています。皆さん、めっちゃ楽しみにしているようでテンションもマックスで来られるんで、玄関を開けた瞬間、『うわー』って喜んでくださるときはやっぱり嬉しいですね。高松を出発して途中から、景色がガラッと変わりだすんです。同時に気分もガラッと変わりますね」
2023年4月のオープン以来、まもなく丸1年が経とうとしている現在、利用者はおおよそ大学生から24歳以下の若年層で50%ほどを占めているという。集客方法の大半は、経費を鑑みて自社予約サイトと集客力が強いと評価するAirbnbプラットフォームの、大きく2つ。インスタグラムとも紐づけてイメージや情報の発信もしている。
「インスタでの発信は若い方にお任せするようして、幅広い世代に訴求できるように工夫しています。エアビー経由ではインバウンドのお客さまに期待ですね。海外の方って必ずレビューを書いてくれて、旅慣れてる人々が来てくれているんだろうなという印象です。今後は横のつながりもつくりながら、近隣のすてきなお店を紹介したりなど、お客さまへのプラスアルファの提案も行っていきたいと考えています」
ハウスバードの“1日から貸せる家”で宿泊事業を行うメリットは、物件探しからリノベーション施工、全体のプランニング、運営や接客、プロモーション、そして物件の管理まで、一気通貫で任せられる人的資源とノウハウを持ち合わせていること。Hiromiさんの事業も、ハウスバードが立ち上げから併走し共に軌道に乗せてきた。彼らのトータルプロデュースにはいくつかのプランがあり、現在COQAELの運営にはアドバイザーとして関わっている。
「運営に関しては昨年12月から独力でやり始めています。いずれそうしたいという希望は当初からお伝えし、この1年弱でノウハウを勉強させてもらった感じです。この先は自分でやるパートとお任せするパートを取捨選択していこうという段階です」
そんなHiromiさんの施設は初年度で稼働率約30%、収益も概算で6~7割ほど出ているのではといった見込みだ。運営を切り盛りするようになり、お客さまとの直接のやり取りにやりがいを感じるのと同時に、今まで感じとれていなかったニーズを汲み取っている。そして、当初から耳にしていたバケーションレンタル事業のメリットにも手応えを感じている。
「初年度の目標はクリアできそうです。誰にも知られてないような田舎にも結構来てくださるんだなというのが正直な印象ですね。独力のみで今後稼働率が50%近くなると普通の生活ができなくなるくらい忙しくなってしまうなという可能性が見えたので、あまり無理しすぎずにやっていこうかなって思っています。独立して、旅前から旅後までお客様と直接話すようになったことで、何もわからないまま準備するのと少しでも情報を得てから準備するのとでは大きな違いが生まれるなと感じています。私自身、まったく旅行関連の仕事経験がない中で今のところなんとかやっていけてるのは、やっぱりハウスバードさんのおかげ。確実に収益を上げられる物件をつくるというのはとても大事なことですね。大人数を受け入れられる施設をプランニングして進めていただけたことは、とても良かったと思います。事業投資という側面からは、他の投資と比べて1日単位で価格設定ができるので、その時々の経済状況に合わせて柔軟に設定できることがいちばんのメリット。事業として無理なく持続できそうです」
COQAELがある風光明媚なさぬき市の瀬戸内沿いは今、若い世代の移住者が開業する宿泊施設やお店が増え始め、少しずつ活気が生まれはじめている。その一端を担うHiromiさんも、自身の施設があることでコミュニティに少しでも貢献できたらという思いがある。
「それまで、まったく縁のない土地でした。当初決まっていた土地を断念しなくてはならなくなったとき、新たに駐車場を設けなくてはいけなくなったとき、いつも手を差し伸べてくださったのは地元の方々でした。とても気さくな方々ばかりで、すごいありがたい。COQAELがあることで今後地域にもちょっとした変化が生まれて、新たな人の流れができるようになったらいちばんいいのかなって思っています」
Setouchi Retreat Stay COQAEL
https://coqael.com/