ビジネス

京の⾵情と古き趣にひとひねり
未知の興奮と出会える宿に

京都府 Naoko&Yohei さん

2025年5⽉29⽇取材

ホスト同⼠がつながり、情報交換や体験談をシェアできるコミュニティの運営が活発なAirbnb(エアビーアンドビー)。さまざまなテーマでミートアップが企画され、Airbnbを始めたばかりのホストには特にヒントの宝庫となる場だ。2025年5⽉、京都のAirbnbホストコミュニティで初となる清掃活動が主軸のミートアップが⾏なわれた。ホスティング歴10年になるベテランから1年未満のフレッシュなメンバーまで20名近くが参加。その中にいたのが、夫婦でホスティングを始めて6ヶ⽉というYoheiさん。Airbnbだからこそ叶う宿づくりの⾯⽩さや、⼤事にしている想いについて伺った。

ホスティング歴6ヶ⽉のYoheiさん。主催者の⼀⼈で、約10年のホスティング経験を持つ先輩のYusukeさんに誘われ、「⾯⽩い⼈に出会えたら」と今回のミートアップに参加。初対⾯となるホストの皆さんとも交流を交わしながら、川沿いのゴミ拾い。

四条河原町や錦市場など京都随⼀の繁華街からほど近い路地奥に、その宿はある。築90年の京町家をリノベーションし、配された奥庭や隣接する寺を部屋から臨める京の⾵情あるリスティングだ。古物商の有資格者でマーケティングコンサルタントとして経験を重ねたYoheiさんと、⼀級建築⼠の奥様Naokoさんがタッグを組み、企画から設計、施⼯に⾄るまでを⼿がけた。

路地奥に佇む、築90年の伝統的な京町家をリノベーション。ホストプロフィールの“建築家”に興味を惹かれ、インド、中国、ニュージーランド、イタリアなどさまざまな国から建築家や建築関係のゲストもたくさん訪れるそう。⽊材やモルタルなど各国の建築材料や技法の話で盛りあがるという。
奥庭も配置。隣にはお寺があり、寺社仏閣が点在する古都・京都らしい⾵情も味わえる。

広告代理店でマーケティングコンサルタントのスキルを磨いたYoheiさん。⼀級建築⼠として主にホテルプロジェクトを⼿がけてきた建築デザイナーのNaokoさんとタッグを組んで宿を運営している。

室内の⾄るところには夫婦でコツコツと集めた⾻董品のコレクションが散りばめられ、アートギャラリーのような洗練された空間にもなっている。しかし、ゲストのレビューにあるのは、ただ伝統建築やアンティークに魅せられたという声だけではない。『これまで泊まった中で最もユニークな宿だった』『まるでワンダーランドのよう!』といった驚きと興奮を含んだキーワードがいくつも並ぶ。

「私たちの宿では、伝統的な日本の建築空間や、階段箪笥をはじめとするアンティーク家具などを、⾒て、触れて、体感できるようにしています。“⼦どもと⼦ども⼼を忘れない⼤⼈が、⽇本の伝統建築やアンティークで遊べる宿”、というのが空間づくりのコンセプトです」とYoheiさん。

そんな遊び⼼あふれる宿をめざしたきっかけは、Airbnbに縁をもらった幾多もの宿泊体験にあるという。

江⼾時代の初め頃に登場したという階段箪笥。お⼦さんが触ったり座ったりして、当時の暮らしに想いを馳せ、古家具の重厚感や歴史を肌で体感できる。
エントランスに鎮座する⽩壁のオブジェは、想いを実現するために大工の技を会得したYoheiさん作。薬箪笥や、落雁⽤の鯛の⽊型、茶室に飾る花⼊れなどを壁に埋め込み、触れて楽しめるようにしている。
⾹箱の蓋や有⽥焼の碍⼦(電線の絶縁や⽀持に使われる)といったアンティークパーツを⽤いてつくったピンボール。

2⼈はもともとAirbnbのヘビーユーザー。海外旅⾏が⼤好きで、訪れた国は30カ国以上。10年ほど前に初めて利⽤して以来その魅⼒に取り憑かれ、宿泊先はすべてAirbnbで探している。

「Airbnbの魅⼒は、地元の⽂化や暮らしを感じられ、その地に根付く⼈とパーソナルで温かい交流が持てるところです。たとえば、パナマ共和国の秘境サンブラス諸島での船中泊は、狭い船内で6名の共同⽣活。波のない穏やかな海は⼼地よく、ときには海辺や⽔上の家に船を停めて昼からビールを飲み、壮⼤な⾃然の中でぼーっと過ごす。“今この場所でしかできない体験”に⼼を打たれました」(Naokoさん)

そのほかにも、クロアチア共和国の歴史的な住宅で、互いに⾔葉が通じないまま喋り続けたホストのおばあさんと過ごした⽇々や、スペインのゲストルームや⽇本の古⺠家といった素晴らしい宿との出会いに深い感銘を受け、「⾃分たちらしい表現を追求した宿をつくりたい」という気持ちが芽⽣えた。

そうして⾏き着いたのが、<⽇本建築>×<アンティーク>×<誰もしたことがないアイデア>を組み合わせて、“そこでしか体験できないもの”“未知に触れる⾯⽩さ”を突きつめて創るということだった。

壁⾯には迫⼒ある表情に圧倒される備中神楽⾯などがディスプレイされ、伝統の⼿仕事を⽬にできる。これらの⾯を使ったちょっとしたカラクリも興奮を誘い、ゲストを喜ばせている。

まさにこの宿の最たる特⻑の⼀つは、⽇本建築の様式と⾻董品を組み合わせた“エンタメ性のある仕掛け”だ。ここで種明かしはできないが、ただ伝統的な建築物の中に⾻董品を飾るだけでなく、古き良きものに触れながら、のびのびと遊べるサプライズ演出が⼤好評で、出かけた先で「まだ冒険が残っているから、早く宿に帰りたい!」とワクワクをおさえきれないような⼦どもたちもいるそうだ。

「帰国後に、“もう⼀度あの宿に泊まりたい”と親御さんに懇願したお⼦さんもいるそうで、そんな喜びの声を聞くととても嬉しくなりますね」(Naokoさん)

「建築家、デザイナー、そしてクリエイターとしての視点から⾒て、Airbnbは⾃由度が⾼く、よりクリエイティブなアイデアが実現しやすいフィールドです。これからも、“ものづくり発”の⼈だからできる⾯⽩いものを追求していきたいし、そのチャンスがここには広がっていると思います」(Yoheiさん)

また、最後にもう⼀つ印象的な体験としてあげてくれたのが、⾻董品探しを⼿伝ったときの話だ。あるとき、Yoheiさんが古物商の有資格者と知ったゲストから、“10 年探していた⾻董品がある”と相談を受けた。鐙(あぶみ)と呼ばれる⾺具の⼀種で、江⼾時代には美術品としても装飾の美しさが注⽬された。

「その⽅は、気になったときに買わなかった後悔がずっとあったらしく、⾊んなツテや情報を辿って最終的には堺まで⾞を⾛らせました」とYoheiさん。その場で購⼊を決められたそうで、楽しくも⼤事な旅路にお供できたことが、忘れられない思い出になったそうだ。ゲストと深く関わり、かけがえのない素晴らしい時間を共有できる。それもAirbnbの魅⼒だと教えてくれた。

東京や⼤阪で清掃活動を軸とするミートアップは定期開催されているが、京都は今回が初の試み。約20名が参加し、清掃後はみんなでランチ。「チャレンジしてみたいと思っていたことのヒントも得ることができた」とYoheiさん。ランチ後も話は尽きず、ホスト同⼠の交流が続いた。
photo:Hideki Nakazato(Isla), Yohei
text:Tomoko Tanaka
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