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まったく異なる業界に飛び込み、ゼロからスタートを切るには必ず、それなりの不安や苦悩がつきまとう。それはホストへの転身もしかり、一歩を踏み出したくても知識も経験もなく、右も左も分からない……そんなとき、Airbnbお墨付きの補助ホストが寄り添ってくれたなら、一人で無駄な遠回りをすることなくスムーズに、ホストとしてのやりがいや楽しさを感じられる。岩手県紫波町のYoshikatsuさん&Yumiさんご夫妻も、補助ホストのShoさんのおかげで諦めていたホストの夢を叶え、第二の人生をますます輝かせている真っ最中だ。
Yoshikatsuさんが初めてShoさんとコンタクトを取ったのは2025年7月、それから約1か月後の2025年8月には念願のホストデビューを果たし、その後も順調なペースで国内外からゲストが訪れている。家主居住型の先輩ホストとして、Shoさんはリスティングの立ち上げから運営のノウハウをきめ細やかにサポート。先輩と後輩のような関係性で、気軽になんでも相談できるのは何より心強いと語るご夫妻。とくに田舎であればあるほど情報網も導き手も少なく、地域ごとの事情や条例なども大きく異なる。だからこそ地域の特徴やローカルルールを熟知し、土地勘もある地元の先輩ホストから手ほどきを受けられる意義は大きいだろう。
人生経験が豊富で人情味に溢れるYoshikatsuさん&Yumiさん、Airbnbスーパーホストと前職で培った実績や経験が豊富なShoさん、この三人四脚で叶えた唯一無二の宿。補助ホストとの出会いから、「自分たちにできるのか?」という不安や悩みは嘘のように晴れ、思い描いていたよりずっと楽しい、ホストとして大きな自信と喜びに満ちた毎日を送っている。

── Yoshikatsuさんは海外駐在歴17年、ワイナリー勤務歴15年と伺いました。まずはこれまでのご経歴を教えてください。
新ホストのYoshikatsuさん(以下、Yoshi)
私はオーディオメーカーのアイワに勤務中、シンガポール、マレーシア、インドネシアと合計17年間の海外駐在を経験しました。この家はアイワに勤務していた1985年に建てたんですが、2002年に帰国し、精密部品製造企業を経て、2009年から紫波町内にあるワイナリーに転職しました。最初は主にワイナリー併設の体験工房で、手作りソーセージやそば打ち体験、ピザやお菓子のタルト作りを指導するインストラクターをしていましたが、コロナ禍の影響で体験工房が一時休業に。以降はワイン造りの仕事をメインに、葡萄の栽培から収穫、仕込み、発酵管理、成分分析、瓶詰め、製品化、売店での販売まで、ワイン製造の一連に携わりました。葡萄もワインも好きだったので楽しい仕事でしたが、70歳を越え、2024年9月末に退職。そうして1年後の2025年8月から、この家でホストとしてスタートし、約2か月が経ったところです(2025年10月取材時現在)。
──オーディオ業界からワイナリー、そこからAirbnbホストへの転身にはどんな経緯があったのですか?
Yoshi
最初のきっかけは2年半前まで遡るんですが、私は北海道出身で、小・中学校の同級生である阿部一男くんが2025年まで8年間、北海道十勝の清水町長を勤めていたんです。その阿部くんのところへ2年半前に遊びに行ったとき、彼自身も民泊ホストも務めながら、町ぐるみでAirbnb民泊を通した地域活性に取り組んでいることを知りました。そこから民泊に興味を持ち始めて、旅行客はもちろん、都会暮らしで田舎のない人たちでも里帰りができるような拠りどころになれたらと、漠然と思っていたんです。
その後、2年前には紫波町からの勧めで農家民泊の許可を取得したので、あとはAirbnbに登録するだけという状況でした。ただ、70代の私はインターネットやスマホの操作が苦手で、何度かトライしたものの30分で断念してしまい(笑)、自分には無理だと諦めていたんです。そのまま2年が経った今年、2025年6月にシンガポール駐在時代の仲間でIT会社を経営する友人と再会し、Airbnbの立ち上げに何度もくじけた話をしたところ、彼が盛岡で活躍するShoさんを紹介してくれたんです。最初は補助ホストの存在も知らないまま、さっそく7月にShoさんにコンタクトを取りました。そこからはもうあっという間で、7月中旬にはリスティングが完成し、翌8月には青森ねぶた祭りを見に来るゲストたちが何人も泊まりに来てくれて、あまりの速さに驚きましたね。

──諦めていたところに救世主が現れたわけですね! Shoさんはファーストコンタクトから開業までの約1か月で、どのようなサポートをされたんですか?
補助ホストのShoさん(以下、Sho)
Yoshikatsuさんから今年の7月6日にお問い合わせをいただき、オンラインでお話を伺ったあと、「まずは僕をゲストとして、Yoshikatsuさんのお宅に泊めてください!」と提案したんです。そうして7月15日から一泊ご招待いただき、民泊やAirbnbについてひととおりお話しました。同時に、僕がこちらに泊まってみて素敵だなと感じたところをパシャパシャと撮影して、泊まった翌朝、7月16日にはリスティングを完成させました。つまり、初めて宿泊した1泊2日で、お2人にスタートを切ってもらった形です(笑)。
──立ち往生したまま2年、そこから1泊2日でスタートとは驚きのスピード感ですね!
Sho
はい。まずはスマホにアプリを入れてAirbnbのアカウントを作るところから始めて、パソコンとスマホの前で「次はこれ、次はこれ。ここはこうですよ」と、一つひとつのプロセスを一緒に進んでいきました。
Yoshi
私たちはアナログ世代なので、隣りでこうしてああしてと言ってくれる導き手がいないと無理だと諦めていたんですが、Shoさんが全部教えてくれてありがたかったです。一歩を踏み出そうにも自力ではできなかったことを叶えてくれて、開業後も困った時はいつでも助けてくれる、本当に頼もしい存在です。

── Shoさんはホスティング歴6年、スーパーホスト歴4年、2年前からはYoshikatsuさんを含めた5件のサポートを担当されているそうですね。
Sho
はい。僕自身は2019年から山の麓にログハウスを建てて「FUMOTO」という民泊宿をやりながら、Airbnb東北コミュニティリーダーとしても活動しています。前職は東北の安比高原で観光業を16年、ログハウスメーカーで4年ほど建築業に携わった後、コロナ禍を機に会社を辞め、自分でログハウスを建てて民泊宿を始めました。16年間の観光業と4年間の建築業で培った経験や、法律・金融関係の知識は、自分がホストをする上でも役立ち、これは誰かをサポートするにも活かせるかもしれないと思い、1年前に盛岡のご近所さんで、60代のAkasakaさんご夫妻の立ち上げをお手伝いしたんです。すると国内外からたくさんのゲストが訪れてくれて、Akasakaさんご夫妻もすごく楽しんでくださって。その様子を見て、「民泊ホストには、退職後の60~70代がもう一回輝けるチャンスが眠っているのかもしれない!」と感じて、サポート業にも力を入れていったんです。そのうちに2025年3月からAirbnb補助ホストマーケットが始まり、正式に「補助ホスト」として活動を始めました。
──経験豊富なShoさんから見て、Yoshikatsuさんの宿はどんな印象でしたか?
Sho
まずストーリーとして大きな魅力を感じました。目の前には葡萄畑が広がり、室内に入ると目を引く薪ストーブ、高級スピーカーから流れる音楽と美味しいワインなど、ここならではの良さを感じたので、あれこれ手を入れるより「もう、このままでいいんじゃないですか!」とお2人にお伝えしました。もちろん生活感のあるものは隠したり、細かい配慮は必要ですが、あとはリスティングでどう見せるか、どうしたらゲストに喜んでもらえるかを考えていけばいい。そう感じて、まずは僕がこの宿のいいところを見つけて写真を撮って、「Jazzy」という屋号と、「葡萄畑に響くJAZZとワイン、薪ストーブ囲むスローライフ」というキャッチなどを一緒に考えていきました。
Yoshi
Shoさんに我が家のあれこれを「ここが素敵ですよ!」と言ってもらい、自分たちにとっては何でもない日常が、第三者から見ると魅力的に感じてもらえるんだと発見がたくさんありました。長年住んでいる自分たちでは気づけなかった良さを引き出してくれて、写真や謳い文句に表現するセンスも素晴らしいなと感動しましたね。
何より嬉しかったのは「それぞれの良さがあるから、このままでいいですよ!」と言ってもらえたこと。あれこれ手直しするのは大変ですし、頑張って無理をすると続かない。それより葡萄畑や薪ストーブのある家で、美味しいワインといい音楽を愉しむなど、私たちが好きなことをゲストさんも一緒に体験してもらって、気に入ってくださるか否かはゲストさんに委ねる。そのほうがストレスなく楽しく続けられそうだなと思いました。
Sho
ホストそれぞれに事情は違いますが、すべて完璧にしてからスタートするより、最初は「そのままやりましょう」と、僕は皆さんにお伝えしているんです。改善したほうがいい点は、そのうちレビューでフィードバックが出てくるので、そこで手直ししていけばいい。あとはゲストとのコミュニケーションなど、ホストを始めたての皆さんがつまずきやすいところは特に、手取り足取り寄り添うようにしていますね。


──補助ホストとしてのサポート料金は、どのようにされているんですか?
Sho
Yoshikatsuさんのように、ゼロから立ち上げを伴奏させていただいた場合は、売り上げの20%を補助ホスト料金としていただいています。その後、しばらくサポートに入りながらホスト経験を重ねてもらい、ホストさんが慣れてきてきたら僕はサポートを外れるようにしています。
Yoshikatsuさんの奥様Yumiさん(以下、Yumi)
まだまだ分からないことも多いので、もうしばらくはサポートを継続してもらう予定ですが、何かあったらいつでも相談できて、その都度きめ細やかにアドバイスしてもらえる安心感は本当にありがたいですね。最初は「私たちにできるんだろうか」という不安やプレッシャーのほうが大きかったんですが、まだ2か月なのに週一くらいのペースで国内外からゲストが来てくださって、Airbnbホストを始めていなかったら巡り合わなかった素敵なゲストさんばかり。今は不安な気持ちはすっかり消えて、私たちの方が楽しませてもらっているくらいです。

──初対面からまだ数ヶ月とは思えないほどお互いの信頼関係も深まっていて、素晴らしい二人三脚、三人四脚ですね。Shoさんは補助ホストとしてサポートする上で、どんなことを大切にされているんですか?
Sho
僕は体験が何よりも大事だと思っていて、サポートする方には必ず「ホスト体験&ゲスト体験」の両方を体験してもらうことを勧めているんです。Yoshikatsuさんにも最初に僕が泊まって「ホスト体験」をしてもらいましたが、もう一つ大事なのが「ゲスト体験」。とくにAirbnbはホストとゲストの双方から評価する仕組みがあるので、ゲスト体験も大事な学びなんです。なのでYoshikatsuさんご夫妻も、同じ盛岡で僕が最初にサポートしたAkasakaさんの宿にゲストとして泊まってもらい、反対にAkasakaさんご夫妻もここに泊まりに来てもらいました。そうして盛岡や東北エリアの民泊ホスト同士が、お互いにホスト体験&ゲスト体験をしながら交流し合うことを提案しているんです。
───ホスト側だけでなく、ゲスト側の気持ちや目線を持ってみるのは大事ですね。
Yoshi
ゲストとして泊まると見る目線がまったく変わり、すごく勉強になりました。衛生面ひとつにしても、自分がゲストとして泊まったら「こういう汚れは気になる」「ここはしっかりしているな」など、自分たちのスタンダードを見直すきっかけになりました。今後も国内や海外、いろいろなところに出向いてAirbnbの宿巡りをしようと思っているくらいです!
Yumi
他の宿を見るとすごく参考になりますし、料理のレパートリーももっと増やしていきたい意欲が湧いてきました。この年になっても何かのスキルアップに挑戦したいと思えるなんて、ホストになる前は考えてもいませんでしたね。そしてShoさんのアドバイス通り、「民泊宿にはそれぞれの良さがある」ことも実感できたので、私たちにできることを私たちらしく、無理せず続けていきたいなとも思えました。
Sho
盛岡や東北エリアはまだまだAirbnbの宿が少ないほうですが、今後だんだんと強豪が増えていったとしても、民泊の場合は部屋も違えば人も違うので、同じ宿に被ることは絶対にないんですよね。なので、それぞれがそれぞれのスタイルでいいと僕は思っています。

──盛岡や東北エリアは民泊がまだまだ少ないからこそ伸びしろもあり、地元に貢献できるチャンスも眠っていそうですね?
Sho
そうなんです。今は東北だけでなく日本全国でどんどん空き家が増え、定年を迎えた方も増えている中で、Yoshikatsuさんご夫妻のように定年された60~70代も、ホストとなって輝く人が増えるといいなというのが、僕の夢でもあるんです。実際、僕がサポートした皆さんはとてもイキイキと楽しんでくださっていて、そういう方を増やすために、いろんな方に「空き家にする前にホストをしませんか」とお誘いしているんです。空き家が増えると同時に、物件は持っていないけれどAirbnbホストをやりたい人も増えているので、この双方をマッチングができる仕組みも整えたいなと思って動いているところです。
──補助ホストと新ホストのタッグによってホストもゲストも笑顔に、地域にも貢献できるのは素晴らしいですね。最後にホスト、補助ホストとして今後の目標を聞かせてください。
Yoshi
今の私たちがいるのはShoさんのおかげ、ホストの楽しさも想像以上で、さらに世界が広がりました。地元の人たちは「ここは田舎で何もない」と言いますが、空気も景色も四季折々に多彩な表情があり、ここならではの良さをたくさん感じます。ゲストにもその魅力を体感してもらいたいですし、海外の方にも「日本のこんなところにも美味しいワインがあったぞ」という記憶を持ち帰ってもらえたら。今後もゲストとの交流を通じて、世界各国に友人・知人の輪が広がっていくのもとても楽しみです。
Yumi
Shoさんと奥様がとても優しくサポートしてくださって、不安でたまらなかった私たちに大きな自信と喜びをくれました。今は当初の自分に「大丈夫だよ!」と言ってあげたいですし、同じように悩んでいるなら補助ホストの力を借りて、ぜひ一歩を踏み出してほしいなと思いますね。
Sho
お2人がこうして楽しんでくださっていることが何より嬉しいですね。民泊は新しい文化で、以前は相談する窓口がどこにもなかったので、実は僕自身も始めた当初はたくさん苦労したんです。けれども、どんな分野でも経験者や先輩に聞くこと、実際に経験すること、教えてくれる人のところへ行くことが一番早くて分かりやすいと思うんです。なので迷っているなら、どんなことでもいいからまずは相談してもらえたら、それだけで道は開けていくと思います。僕自身も、これからもその人それぞれに寄り添ったサポートを心がけながら、ホストデビュー後もゲストへのおもてなしや楽しませ方を一緒に盛り上げていくお手伝いをしていきたいと思っています。

今回の補助ホスト
Shoさん
サポートを受けたリスティング
【1日1組】葡萄館に響くJazzとワイン大人のスローライフ民泊宿「Jazzy」